2013/06/20

PEACEくん



やさしいおじいさんは鹿のPEACEくんに「近頃、鹿たちが農作物を荒らすので困っているんだよ」と話した。
「仲間の鹿たちも生きるのに必要なんだよ」とPEACEくんは答えた。
「でも、このままだと鉄砲やわなで殺されちゃうよ」
自然環境が変わり、豊かな里山の汚染がひどくなり生きるのに必至なんだ。

子鹿の頃にけがをして森の中で生死をさまよっていたところをおじいさんに助けられたPEACEくんはおじいさんを助けて恩返しをしたかった。
PEACEくんは考えた。
どうしたら争わないで仲良く共存できるだろう。
PEACEくんはある日、楽しそうに火を囲んで踊っている人間たちに山の中で出会った。かれらはみなフレンドリーでついつい誘われていっしょに時を忘れて踊った。
こんなに楽しいと思って時間を忘れて踊ったことはなかった。
これが生きるってことなんだろうと感じた。
PEACEくんは仲間たちに踊りの楽しみを話した。
僕たちも楽しく踊ろうよ。
目に見えないボーダーの中で楽しく踊って暮らそう。
PEACEくんは仲間たちに相談した。
「人間に殺されるのと飼われるのとどっちがいい」

飼われるのは嫌だけど殺されるのは絶対に嫌だ。
彼らは楽しく踊れておいしい植物の種を持っているんだよ。
その不思議な植物の種は本当に舞い上がるようにおいしくてすごい勢いで大きくなるんだ。餌をとるために人間の畑に行って盗人みたいなことをしたくないだろ。
殺されるかもしれないんだよ。
目に見えないボーダーの向こうに、その種を蒔いてもらおうよ。
死ぬよりは生きることだよ。
人間たちは目に見える囲いをつくり、そこを「鹿公園」と呼んだ。
しかし、PEACEくん鹿たちは楽しく踊った。
人間たちは檻の前まで来て、楽しそうに踊っている鹿たちを見ていいなと口々につぶやいた。その瞬間、まるで檻の中にいるのは人間たちのようにPEACEくんは考えた。
PEACEくんは恋をして美しいメス鹿の間に子鹿が生まれた。
      御供平気 2013/3/19

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