2010/11/28

スペクテイター青野氏


THE FOOL ON THE HILL

TEXT : TOSHIMITSU AONO


長く続いた旅がやがて終わりをむかえようとするとき、胸にこみ上げてくる想いがある/楽しかったあの旅の日々が、これからも永遠に続けばいいのに…/きっと誰もが一度は抱いたことがあるに違いない日常と非日常の境界をめぐる葛藤/そして大半の人は、ため息とともに再び日常へと戻っていく/旅を続けるには時間も金も必要だ/それには、まずは仕事をしなきゃ/忙しく仕事をこなしているからこそ新たな旅ができるのだ/とか、なんとか自分に言い聞かせながら/日常から逃れ続けて、一生旅して過ごすなんていうのは、しょせんヒッピーや世捨て人みたいな連中の考えるタワゴトだ/うん、確かにそうかも知れない/それが至極まっとうな常識的な大人の意見ってやつかもね/でも、果たして本当なのかな?/日常から逃れ、旅に出たままの気分で一生を過ごす方法はないものか?/丘の上のバカは考えた/何日も、何日も/紫の煙のなかを手探りで進みながら、心の旅を続けた/そして見つけた答はとても単純なものだった/そうだ、日常のなかを旅すればいいんじゃないか!/レトリックなんかじゃなく、毎日を旅する気分で過ごせたら、それはどんなに素敵なことだろう/旅が現実になれば、仕事をする必要もない/わざわざ長い休暇をとる必要もなければ、旅に出る必要すらなくなるはずさ/それを実行に移すには、まづは道具が必要だ/それさえあれば会いたい人に会えて、やりたいことができて、行きたいところへ連れて行ってくれる/そんな万能のツールを手に入れよう。そうして再び丘の上に登ったバカが思いついた戦略が、一冊の雑誌を作ることだった/雑誌と言ってもコンビニや駅のスタンドで売られているような情報詰め込み型のヤツじゃない/作り手の妄想や思いつきで読者をトリップさせてしまう常識を超えたキラーなコンテンツ/ページをめくるだけで日常なんて軽くふっとんでしまうくらい刺激的/そんな非常識的な中身の雑誌を作ろうじゃないか/かくして一冊の雑誌が出来上がり、丘の上のバカは今も旅を続けている/気心の知れたバカな仲間と日常の中の非日常をサーフィンでもするような気軽な気持ちで、右や左へと彷徨いながら/これから先どこまで行けるか/答えは煙に聞いてくれ

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