2010/08/31

堕落論


堕落自体は常につまらないものであり悪であるにすぎないけれども、
堕落のもつ性格のひとつには孤独という偉大な人間の実想が厳として存している。
すなわち堕落とは常に孤独なものであり、
他の人々に見捨てられ、
ただ自らに頼る以外に術のない宿命を帯びている。
善人は気楽なもので父母兄弟、
人間どもの虚しい義理や約束の上に安眠している。
社会制度というものを全身に投げかけられて平然として死んでいく。
だが、堕落者は常にそこからはみ出して、
ただひとり荒野を歩いて行くのである。
悪徳はつまらぬものであるけれども、
孤独という道は神に通じる道である。
キリストが淫売婦にぬかずくのも、
この荒野のひとりいく道に対してである。
この道だけが天国に通じているのだ。
何万、何憶の堕落者は常に天国にたどりつけず、
虚しいひとり地獄をひとりさまよう。
この道が天国に通じていることに変わりはない。
御供

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