2010/06/21

どうしてなのか


私はなのも手にしたことがない。
勝利の快感も、
お金も、財産も、家も、
社会的な地位も、
はるかなる道を旅することも、
美しい女性からの求愛も。
どうしてなのか?
私のなしてきた仕事が雑誌のファッションだったこともあって、
時代とともに消え去っていった。
しなやかにこまやかに飾られることもない。
私の仕事がもてはやされた一瞬も確かにあった。
しかし、長くはつづかなかった。
はかなく、かすかな悲しみの中に消えた。
私の心は時代に揺り動かされて、
時代をつづけることはできなかった。
折において夢と夢の会い間に身をおいた。
生が私をかきたてはしなかった。
思うがままに、私は私の道を生きてきた。
人生はいつも明るい大通りを歩いていた。
ほがらかに誘い、
泣いて、私は夢を見つづける。
目覚める瞬間に訪れる夢のような、
現実とはかけ離れた夢。
すぐ後ろにあるような気がする。
私の生まれもった夢は何だったのか?
眠っている私の上を夢の影が走り過ぎた。
色を失った絵の具のようだ。
ふるさとを持たない風のように、
どうしてなのかわからない。
おごそかに私は私の夢と向きあったことがない。
風の中を舞い散る花のように、
私の夢は短い命で美しく咲かせたのか。
蒼ざめて、ゆるやかに、
夢の道を進んだことなどなかったのではないか。
私は高い柵にもたれて立ち尽くしいて、
実は歩いたことなどないのではないのか。
空の彼方に雲がゆき、
この道の彼方に風が渡る。
道の彼方にさすらうのは、
私の知らない迷い子。
私は願ったわけでもないのに、
さらなる旅へと憧れる。
幾度となく不安を抱いていた。
旅ゆく私をなぐさめてくれる風。
私は目的も道筋も知らぬ旅人。
遠い闇をあてどなく迷いながら歩く。
すると、見も知らぬ壮麗な出会いが私を待っている。
いかなる時もこのハプニングは私をとりこにする。
私は知らない。
今世界で何が起きているのか知らない。
何も起きていないのか?
世界に眼があり、
宇宙も見ている余裕はない。
なんと重い日々なんだろう。
どんな太陽も笑いかけてはくれない。
すべては空虚でなすすべもなく、
ひとりで立っている。
私は知ってしまったのだ愛は死ぬんだと。
燃えるように費やした日々に、
出来上がったのは幾つかの詩。
騒がしい世の中では誰もわかってくれない。
陽気な人が足取りも軽く通り過ぎる。
この詩の出来上がった術をひとりとして知らない。
この時間は無駄だったのか。
楽しい至福の時間であった。
目標だけを飛ぶように追い求める日は、
旅人の甘い味わいを知ることはない。
どうしてなのか?
   御供     11/12/22

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