風に乗ってゆくには重過ぎて、
おだやかな夢のような甘美な香りに誘われる。
香りに酔った私は、
頭にしみとおる幾つもの記憶を追う。
この香りは、
あなたからの手紙の便箋にしみこんだもの。
時折吹いて来る風がきれぎれに歌声を運んで来るように、
私の鼻をかぐわしいものに変える。
新緑萌ゆる生け垣を越えて香りに誘われる。
あなたへの思いを引き寄せる。
あなたへの心の中に、
甘美な愛の調べを聞きわける。
私は目を閉じて、
つつましいあなたからの香りを吸い込む。
すると、その香りはひそかに私の心に、
あなたの影を投げかける。
やさしいあなたからの香りは、
土の匂いと混じり合い。
なま暖かい真昼の風に乗って、
もの静かな客人のように窓から入って来る。
私はよく考えてみた。
この香りがこんなに貴重に思われるのは、
私の中のあなたへの愛が大きく咲いているからだと。
その香りは魅力的に私をとらえ、
あふれるばかりの愛で私を包む。
予感させる歌のメロディのように。
そっと愛撫しながら私を感動させる。
比類なく清らかで繊細だ。
私はあなたからの香りに夢中になり、
何度も何度も手紙を読み返す。
その度、私は勇気が湧いてくるのを感じる。
甘い忘却と甘い現存が繰り返す中で、
あなたの香りが私を包み支配する。
御供
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