2010/04/20

無くしたもの



ごくつまらないものをひとつ無くした。
無いとどうしても困るというものでもない。
懐かしい思い出があるわけでもない。
代わりの新しいものは街のどこの店でも売っている。
けれども使い込んだヤツを無くした。
出てこないんだ。
出てこない。
それだけのことなんだ。
引き出しという、
引き出しは永却の迷路と化した。
私はそれを3時間もさまよっている。
途方に暮れて庭に下り立って、
冬空を見上げる。
一番星が輝きはじめた。
自分は何のために生きているのか。
実にとりとめのない疑問が頭をもたげた。
こう考えたのは何十年ぶりかのことではあるけれど、
もとよりはかばかしい答えなどあるはずがない。
せめて品良く探そうと衣服の乱れを改めた。
勇気を出して叫び室内に戻ってみる。
見慣れた什器だけが、
そこにあった。
無くしたものではなくて違うものがあった。
私には私自身が見える。
心の中のポジティブな気持ちだった。
いいや、きっと出てくるよ。
  御供 2004/3/22 11/11/7 14/4/14

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