2010/04/25

東京で



季節の変わる頃になると、
また次の季節の引っ越しの準備をする。
似たような気候なのに気持ちがぜんぜん違う。
おそろしいほどのスピードで東京の時間は進んでいる。
全部を見ることなんてできやしない。
あそこも東京、ここも東京。
海の向こうからも東京が揺れている。
夕陽がビルの谷間に沈む街。
一日中休まないおそろしいほどの大都会。
たくさんの人がいてたくさんのモノが溢れてる。
そんなたくさんの中のひとり。
巨大な東京にいつから反抗できなくなったのかおぼえていない。
東京にいるとどんどん自分が小さくなっていく。
そう錯覚する。
言いたいこともいつの間にか言葉にできなくなっている。
東京が悪いんじゃない。
でも、単純に言えない時代。
社会のせいにもできやしない。
反抗しているだけじゃはじまらない。
いつまで悩んでも、
人の顔色をうかがっていても仕方ない。
何について腹がたつのかわからない。
世界中でこんなに乱雑に混沌としている街も珍しい。
まわりに合わせて生きていくのか。
それは自分に対して反抗することなのか。
私が私であるためには今を生きることが大切だ。
自分がどこにいるのか。
見失うこと無く東京で生きる。
嫌だとはっきり言えないでいる。
断りきれないで責任ばかりが先にたつ。
わずらしさに消えていく時間。
社会のせいだなんて言いたくはないけれど、
トラブルが多過ぎる。
私が私であるために嫌だなんて言えない。
地球が丸いことがせめてもの救い。
世界が狭くなっていくのがせめてもの助けで角張っていたら、
息がつまってしまうだろう。
誰かの思惑に操られる。
「自分らしさ」を忘れてしまったら楽なのなのかな。
打ちのめされて苦しんで、
起き上がることにも慣らされている。
どんなに退屈でも、
どんなに嘘っぽくても、
どんなに操られているとわかっていてもふりをする。
人目を気にして嫌と言えない。
どちらを取るかいつも悩んでいる。
言いたいことさえ言えない。
自分なんてあるようでないのかもしれない。
糸引く人間たちには引かれたくない。
どんなに寒い時代でも東京はびくともしないほど巨大。
でもゴチャゴチャしていて、
その中に何を見つけたらいいのかわからずに膨張している。
東京にいたら必要なものがあり過ぎる。
贅沢というなまけ心がはえてくる。
暮らしているだけで夢見る余裕さえも消えていく。
地下鉄やガソリンがなけりゃ生きていけない。
どうにか転がれるけれど、
いたわりや遠慮がなくても転がれる。
私は心配していない。
それでも流れにそって生きられるほど器用じゃない。
良い子のままじゃ住みきれない。
どんなに溶けても上手くやれるさ。
やさしいこの街に住む。
私のことなら大丈夫。
この街は囲いのない見せ物小屋。
自由に縛られていることもわからずに、
見張り台から監視されてる。
早く誰か気づいてくれ。
頭をぶちのめされる前に気づいてくれ。
平和はオブラートみたいに薄く覆っているだけ。
この街をパラダイスと言う人もいるけれど、
パラダイスがあるんだったら教えてよ。
いつものように爽やかな朝が来る。
でも、早く気づかないと。
  御供  2000/9/29 11/11/13 14/7/4

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