2010/04/25

乾いた街



風が強く激しく吹く。
誰もいない都会を洗いさるかのように空気が流れる。
スモッグがないのでいつもより星や月がはっきりと見える。
休日の今日は、
とても冷たくて透き通った空気が肌をつく。
いつもと違う東京の街。
サボテンのような乾いた街が現れる。
大都会に人間がいなくなり、
静まりかえって物音も聞こえない夜。
心は無言の乾いた街を徘徊する。
あてもなく進む。
街並に人々は姿を出さず、
瞬間的な魅力を投げかけるが見えない。
すべての人間が他の人間を閉め出せないで泣いている。
とどまった者たちも、
超自然な暗闇のプラット・ホームに立ってはいない。
絵のように空っぽで乾いた街は、
いろいろなことを気づかせてくれる。
耳の片隅には雑音が残り、
すべてのビルは閉まって明かりはついていない。
歓楽街だけはあいも変わらずギラギラのネオン。
気のすすまぬ天使のように大都会で遊ぶ。
魂に揺さぶられてほっつき回る。
未知な言葉を探して夢中遊行的にあたりに話かける。
わいせつな紫の煙りに、
黒い魔術にかかったようにトリップする。
時間は止まってはくれない。
いつまでもこの状態がつづくわけじゃない。
少しの希望の光を胸の奥にしまいこみ、
乾いた街の優雅な空気を呼吸する。
素晴らしい生を感じる。
人間もいないかわりに争いもない。
いつもと違う休日のこの大都会を楽しむ。
心なしか乾いた街にやさしいぬくもりが欲しくなる。
いつまでもつづくわけじゃない。
車のいない道路。
スモッグのないきれいな空気。
まるで別のところに立っている錯覚におちいる。
あと2、3日はこのままでじっくりと楽しもう。
自分の時間の創造に意欲を燃やしたい。
この乾いた街の時間を楽しみたい。
  御供  2001/1/1 14/7/4

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