2010/04/23

時を刻む写真


 時がもの凄い勢いで逃げて行く。一瞬のうちに街の風景はどんどんと移り変わっていく。時に取り残されてしまうのがイヤだったら、シャッターを押そう。何の変てつのない日常の中で、小さなクサビのように心に中に入って来る一枚の写真。耐えられないほど頭の中に入り込んでいく。うなされるほどに目に焼き付いて離れない一枚の写真。
 それは光と影の白日夢に過ぎないかもしれない。
 しかし、一瞬の輝きに心踊らされる自分がそこにいると感じる時こそ生きているという実感はなく、至福への入り口である。なんと、なんと、楽しい地球の中。
 デジタルの新時代に突入している現代に、あえて『一枚入魂』の銀塩コンパクト・アナログカメラで撮りたい。次から次へと発売されるデジタルカメラを片目で見る。携帯電話すらハイスパックなカメラを搭載している時代。デジタルカメラはもうまさに飽和状態。
 だがフィルムで撮影された写真の色味、質感、プリントの雰囲気は何度見ても魅力的。アナログ特有の難しい取っ付きにくい操作方法に挑戦し、その扱いを自分のものとした時に押された一回のシャッター音。その時に撮られた時代を刻んだ素晴らしい写真。
 真を写す、写真もあれば。
 新を写す、写真もある。
 どれだけデジタル化が進んでもシャッターを押すのが人間であれば、写真はどこまでも人間の五感でシュートするものだ。
 ライカが軍用カメラとして発明した35ミリフィルムを使ったカメラ1920年。ズームレンズを使うこともあれば、使わないときもある。高感度のフィルムの時もあれば、使わない時もある。それぞれの技術で焦点を合わせ、人間の力によって写し出される写真ほど心を打つものはない。
 人間の五感が、撃たれたい、撃ち抜かれたい。
人間の餓えた五感がそう叫んでいる時代だ。    
   H.MITOMO 14/6/2

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