東京の中心はどこなのか?
みな自分が中心だと考えてはいないだろうか。
不安でたまらなくて中心を探して歩く。
千代田区一番町のビルの上、そこより上はもうないはずさ。
ここが中心なのかとふと思うけど、
ビルの上には誰が住んでいるのかミステリー。
ビルの上には誰が住んでいるのかミステリー。
謎めいているこのビル。
誰が住んでいるのか知る者はいない。
何をする人なのか知る者はいない。
そのビルの前を通り過ぎる時、
大きさも高さもビルの型も違って見える。
ふと気づく、あのビルは本当に存在するのだろうか?
存在しているのは私の心の中だけ。
ビルの上の階にはIT関係の事務所。
ライフドアがあり、3本木ヒルズと書かれてる。
その下の階には弁護士の集まる法律事務所があるらしい。
堂々としている人たちと一緒に、
こそこそしている犯罪者の目つきの人が出入りする。
その下の階にはペット・ショップ。
子供と老人がニコニコしながら、
子供と老人がニコニコしながら、
放心状態で檻の中に入っている。
その下には食料品の貿易会社の名がある。
果ての国から送られてくるキャビアとトリュフとフォアグラだけを取り扱う貿易食品会社。
その階には宝石と薬を輸出入するらしい、
フリー・メイソンの会社もある。
フリー・メイソンの会社もある。
下にはコンピュターと為替レートの証券取引所があり、
電気や光が消えたことがないようだ。
10階には思いがけない映画館だが、
プレイボーイ・クラブとソープランドがひしめきあっている。
だが出入りしている人間の顔は見えない。
エレベーターが開くと『欲望という名の電車』のポスターが何枚も連続して貼ってある。
床には使い古したティシュとコンドームがところ狭しと捨てられている。
悪臭さえ沸いている。
下に来るにつれて、何かとモラル的な会社。
そんな会社名が目に付く。
大使館ではあるが、人知れずアフリカにある共和国だろう。
壁には救済のポスターのアートがくちはてている。
目をこらして見ると、『ボランティア』と読める。
大使館で働く人たちは、
誰ひとり言葉を話さずランチを食べている。
国旗は見たこともないものばかりで赤とみどりの色がはんらんしている。
その下5階は、安全を売る警備保障の会社。
連夜連日、そこには赤く光った警報ランプが鳴りっぱなしで、
ヒステリックなフロイト・カラーが点滅している。
3階は人間の売買場。
2階は夢を売る店。
そして1階はないものはないというコンビニエンス・ストア。
すべてのものがあらゆるものが、
店内に入ると目の前に手の届くところにベルト・コンベアで運ばれてくる。
それは入った客の心の中をよみとるかのようにするどい作業だ。
一度店に入ると入った者の全員の登録がなされてしまい、
まるで、まったりした区役所の出生届けのコーナーに似ている。
防犯カメラは防犯としてではなく、そのあることも防犯している。
地下3階はマフィアたちの憩いの場。
そこは仲間意識が高まって争いはない。
もしかしたら唯一争いのない地球上のめずらしいところ。
悪巧みと友情と札束の取引の場。
かつてあった郵便局や税務署はもう閉店して閉まって開かずの間。
それでも年金をもらおうとかつての会社員が座り込んで、
新聞紙や書類を燃やして暖をとっている。
この東京の中心にある高いビルは見え隠れしながら建っている。
とてもミステリーなビル。
誰が住んでいるのか知る人も、知ろうとする者もいない。
しかし、住人になりたい人たちの夢の中での競争率は一番高いといううわさ。
楽観的に見ても悲観的に見ても、
不可解な空白の灰色の空が浮かんでる。
ここが東京の中心だと誰も知らない。
東京とはそんなところ。
誰もが中心を探しているが見つからない。
H.MITOMO 11/12/18 12/9/5
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